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作品と批評

本展では武蔵野美術大学大学院 彫刻コース所属の作家7名による新作が出品され、芸術文化政策コース所属の学生によって批評が執筆されました。本ページは、その出展作品の写真と批評文のアーカイブです。

木村​ 桃子 Kimura Momoko

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《線と解体》 70×130×110(cm)、朴、油性ペン

批評:鄒 宜静 Zou Yijing

 木彫制作は、「削る」という不可逆的行為を伴う。その性質を前提に作品は成立している。本作はこの不可逆的要素を利用しつつ、敢えて直接的な表現は避けている。この曖昧さがあるからこそ、作者と鑑賞者の対話が成り立つ。

 人体を基礎とした独特な形体に木を彫り、さらに溝を彫り込んで束や筋をつくった。そして、その表面にドローイングを施すことで、二次元と三次元が合わさった表現を完成させる。三つ編みのように彫られた形はドローイングの線によって繊維のようになり、木彫の塊としての強さを分解し、弱くしている。 

 創作で「何をしたいか」を考えるとき、目の前のものだけに注目することはできない。まず自分自身と対話してから世界に発信すべきだ。理性を中心に考えずに、感性を表現することはすべての芸術創作に共通する。芸術創作は感性が重視される仕事だから、沸きできるイメージを具現化しようと思いながら、作品はほのかに少しずつ現れ出てくるのである。 

 誰でにも、出身地、時代、性別を変えることはできない。与えられた諸条件の中で、無意識のうちに人々は自分だけの特徴を身につけて、ユニークな一人になる。それが制作に反映されてできる形は偶然ではない。木村の作品は女性的な表現をわざと避けている。鑑賞者がそれらの作品に女性的ラベルを貼るのは簡単だが、それは正しい見方ではない。

  作品のすべての要素は作者の考え方を映す鏡だろう。鑑賞者は商品にラベルを貼るように作品を評価せず、じっくり作品を鑑賞して脳にイメージし、独特な作品の形を心に映してみてほしい。

​Photo by Ken Kato

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